いつもお世話になっております。パソナシンガポールです。
シンガポールの政労使で構成するNational Wages Council(NWC:全国賃金評議会)では、毎年賃金ガイドラインを発表しています。今年も2024年12月1日~2025年11月30日までの期間に適用される賃金ガイドラインが10月10日に政府によって承認され、発表されています。
これから昇給、給与改定を検討する時期に入る企業が多いかと思いますが、本ガイドラインは昇給に対する推奨が出ているものとなりますので、きちんと内容を把握しておきたいガイドラインです。
そこで、今月の記事ではNWC賃金ガイドライン2024/2025についてご紹介いたします。本記事がお役に立てれば幸いです。
National Wages Council(NWC:全国賃金評議会)は、人材省(MOM)や全国労働組合会議(NTUC)、シンガポール国家雇用者連合(SNEF)、外国商工会議所などの代表で構成し、景気や雇用市場の動向、経済見通しなどを考慮して、その年度の賃金改定の指針となる賃金ガイドラインを毎年発表しています。
今回発表されたガイドライン(2024年12月1日~2025年11月30日の期間に適用)の3つのガイドラインについて見てみましょう。
まず1つ目のガイドラインとして、NWCはシンガポールの長期にわたる持続的な生産性上昇と経済見通しの改善を考慮し、雇用主に対して公正で持続可能な賃上げで従業員に報いるよう奨励しています。
同時に、企業が直面する当面のコスト圧迫と世界経済の下振れリスクから、賃金制度の柔軟性が必要であることを強調しています。
NWCは雇用主に対して、Annual Variable Component(AVC:年間変動部分)とMonthly Variable Component(MVC:月間変動部分)の両方からなるFlexible Wage System(FWS:フレキシブルな賃金制度)を全面的に実施するよう求めています。
本ガイドラインは全ての雇用主に対して適用されます。また、専門職、管理職、技術職、一般社員、組合に加入している、していないに関わらず、全ての従業員に適用されます。(これには、広範な中間労働者や再雇用従業員も含まれます)
※FWSについて詳しくはこちらをご参照ください。
FWS Online guidebook_15
<業績が好調な会社は・・・>
- 従業員には、会社の業績と従業員の貢献に見合った賃上げや変動支給(AVC/ボーナス、一時金など)を組み込んで報いるべきである。
- ビジネスの見通しが不透明な場合、雇用主は賃金の柔軟性を保ちつつ従業員に報いるためにFWSを実施すべきである。
<業績が芳しくない会社は・・・>
- 経営層が見本を示すかたちで賃金の抑制を行うと良い。
- 特に従業員のスキルアップに投資することで、業務プロセスと生産性の向上に一層の努力を払うべきである。
- 事業の見通しが不透明な場合、雇用主はFWSを実施してレジリエンスを高めるべきである。
また、NWCはCPF(中央積立基金)の対象となる月額給与が、現行のS$6,800から2026年までに段階的にS$8,000まで引き上げられることをハイライトしています。(直近では、2025年1月からS$7,400に引き上げ予定)
雇用主に対しては、賃金の引き上げにあたってCPFへの拠出負担の増額も考慮するように促しています。
2つ目のガイドラインとして、 NWCはすべての労働者がシンガポール成長の恩恵を享受できるよう、低賃金労働者を引き上げる国家的努力を進めなければならないとしており、そのために低賃金労働者に対するガイドラインを勧告しています。(低所得者の定義について、フルタイムのシンガポール国民(永住権保持者を含む)の月給総額の下位20%と設定)
本ガイドラインは、月給総額*が S$2,500以下の従業員にのみ適用されます。
<業績が好調で事業の見通しが明るい雇用主は・・・>
「月給総額の5.5~7.5%の上限」、または「少なくともS$100~120」のいずれか高い方の賃上げを行う。
<業績は好調だが、事業の先行きが不透明な雇用主は・・・>
「月給総額の5.5~7.5%の下限~中間」、または「少なくともS$100~120」のいずれか高い方の賃上げを行う。
<業績が芳しくない雇用主は・・・>
- 「月給総額の5.5~7.5%の下限」で賃上げを行う。
- 事業の見通しが改善すれば、さらなる賃上げを検討する。
*月給総額には、基本月額賃金(月額固定部分と月額変動部分からなる)、手当(出張、食費、住居を含む)、インセンティブ、時間外手当などが含まれるが、通常年次で支払われるAWSおよび賞与は含まれない。また、月給総額には従業員のCPF拠出金を含むが、雇用主のCPF拠出金は含まない。
3つ目のガイドラインとして、 NWCは賃金上昇が持続可能で、生産性の向上によって支えられ続けるためには、雇用者と従業員の双方が事業と労働力の変革に対して果たすべき役割があるとしています。NWCは雇用主に対し、雇用の転換と労働力への投資を継続するよう求めるとともに、従業員に対しては、スキルアップに向けた積極的なアプローチをとるよう求めています。
<雇用主は・・・>
- 将来の仕事のために従業員を育成するべきである。
- 生産性向上のための業務改革と連動した仕事の再設計を行うべきである。
- 従業員育成のための機能を構築するべきである。
- 変革を支える人事機能の強化をするべきである。
<従業員は・・・>
その部門やより広域な経済において自身の知識とスキルセットが求め続けられるように、スキルアップとリスキリングに積極的に取り組むべきである。
<参考リンク>
annex-a—nwc-guidelines-2024-2025.pdf
mom-ntuc-snef-infographic-on-nwc-guidelines-2024-2025.pdf
1010 Government Accepts the NWC Guidelines for 2024 2025
以上、今月は『NWC賃金ガイドライン2024/2025』をお届けいたしました。
また、今後取り上げてほしいニュースレターのテーマについてご意見等ございましたら、どうぞお気兼ねなくご連絡ください。
※本記事で提供している情報は2024年10月31日時点の情報をもとに作成しています。ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。本記事で提供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、当社では一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
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