最新版EP申請ガイド!〜EP申請の要件から申請フローまでまとめてご紹介〜

Recruitment agency singapore. Japanese speaking

いつもお世話になっております。パソナシンガポールです。

9月に入り、Employment Pass(EP)申請における新ポイント制度Complementarity Assessment Framework (COMPASS) が開始いたしました。
COMPASSについては弊社でも過去のニュースレターでその内容を発信してまいりましたが、ここ1~2年でCOMPASSだけではなく、EP申請の要件や申請フローに関する細かな変更が多く、日々の業務でお忙しいマネジメントの方々からすると全ての変更を追い切るのは難しいことも・・・。
そこで今回のニュースレターでは最新版のEP申請全体の仕組みと申請フローについて改めてご紹介いたします。今年新たに赴任されてきた方にとってもご理解いただきやすいように基礎的な部分も含めてご説明しております。ご参考になれば幸いです。


Employment Pass(EP)について

外国人がシンガポールで就業する場合には就労ビザの取得が必要です。
就労ビザにはいくつか種類がありますが、日系企業において最も一般的な就労ビザがEPかと思います。

EPは月額固定給がS$5,000以上(金融サービスセクターはS$5,500以上)のProfessionals, Managers, Executives(経営層人材、管理職、専門職)向けの就労ビザです。
EPの申請は雇用主となる企業が行います。

EPについてはここ数年で取得要件が年々厳しくなっています。
EP取得に必要となる最低月額固定給は5年前と比べると、なんとS$1,400も上がっています。EP取得の最低月額固定給はシンガポールのローカルPMETs(Professionals, Managers, Executives and Technicians)の月額固定給をベンチマークして設定されており、ローカルPMETsのレベルの高まりと共にEP取得者に求められるレベルも高まっていることを意味しています。

Ministry of Manpower(MOM:シンガポール労働省)が発表している Foreign Workforce Policiesでは、Strong Singaporean Coreを維持するために、ハイクオリティ且つ多様な外国人労働者による補完が必要であり、そのためにMOMはForeign Workforce Policesをアップデートし続けるとしています。このポリシーに基づいて、EPやその他の就労ビザに関する規定が変更されているので、常にMOMの方針はウォッチしていく必要があります。

<参考>Foreign Workforce Polices:最新アップデートの目的・背景(2023年2月更新)
• Strengthen the complementarity and diversity of our foreign workforce(外国人労働力の補完と多様性の強化)
• Support industry transformation(業界の変革を支援)
• Provide greater clarity and certainty to businesses(ビジネスにさらなる明確さと確実性を提供)


EPの審査について

2023年9月1日以降の新規申請(更新については2024年9月1日以降)からは、2つのステージで審査が行われます。

◆EP qualifying salary (Stage 1)
まずEPを取得するためには、EP qualifying salaryをクリアする必要があります。
EP qualifying salaryというのは、年齢ごとにおけるローカルPMETs(Professionals, Managers, Executives and Technicians)の上位1/3の給与をベンチマークしたものです。
EP取得のための月額固定給はS$5,000以上(金融サービスセクターはS$5,500以上)となっておりますが、実際には年齢ごとに必要となる最低月額固定給が異なります。
EP qualifying salaryはMOMのサイトにて公開されておりますが、下記はそれを表にまとめたものです。


EP取得のためには、まず申請対象となる候補者の年齢に応じて、上記の金額以上の月額固定給が必要となります。こちらのEP qualifying salaryは定期的に見直しが入るようなので、EP申請前のタイミングで必ず最新の金額を確認するようにしてください。

◆COMPASS (Stage 2)
COMPASSは2023年9月1日以降の新規EP申請(更新の場合は2024年9月1日以降)から適用されている新ポイント制度です。
Stage2ではCOMPASSにて40ポイント以上を取得する必要があります。

*COMPASS除外対象
以下いずれかに該当する場合には、COMPASSによる審査の除外対象となります。
・月額固定給がS$22,500以上の場合
Overseas intra-corporate tansferee(ICT)としてEP申請する場合
・1か月以下の短期間業務のためのEP申請の場合

COMPASSにはFoundational Criteria(基礎基準)とBonus Criteria(ボーナス基準)の2つのCriteriaがあり、各項目についてはIndividual Attributes(個人属性)とFirm-Related Attributes(企業属性)に分かれています。


Foundational Criteria(基礎基準)
Individual Attributes(個人属性)
C1:Salary(給与)
候補者の月額固定給の金額と、雇用主となる企業が属する業界ごとのローカルPMETsの給与ベンチマーク(年齢別)と比較してポイントが加算されます。ローカルPMETsの給与の上位90%以上であれば20ポイント、65%以上90%未満であれば10ポイントが加算されます。

C1のSalaryはMOMのサイトにて公開されておりますが、下記は一部業界をピックアップしてそれを表にまとめたものです。


Stage1のEP qualifying salaryとは異なる点に注意が必要です。
Stage1のEP qualifying salaryは業界関係なく、ローカルPMETsの上位1/3の給与ベンチマークでしたが、こちらは業界ごとにおけるベンチマークになっているため、業界によってStage1のEP qualifying salaryよりも高く設定されているケースもございます。(逆に低くなっているケースもあり)

こちらのベンチマークは2023年5月にリリースされたものとなっており、更新版のリリースは2024年3月を予定されています。(適用は2024年9月~の予定)

C2:Qualifications(学歴)
候補者の学歴に応じてポイントが加算されます。
トップレベルの教育機関 計138校(グループA:120校、グループB:18校一部の学部のみ対象)については20ポイント加算されます。日本からは東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学、東京工業大学の5校が20ポイント加算の対象となっています。

(参考)20ポイント加算の対象となるトップレベル教育機関はこちら
こちらのリストについても定期的に見直しをされる予定であり、次回の更新版のリリースは2024年3月を予定しています。(適用は2024年9月~を予定)

トップレベル以外の学位については10ポイント加算の対象となります。
これは、イギリスの学士号と同等と評価される資格が対象となります。また、業界で広く認知され、関連機関によって承認された専門資格も10ポイント加算の対象となります。

(参考)10ポイント加算の対象となる専門資格はこちら
専門資格リストについても定期的に見直しをされる予定であり、次回の更新版のリリースは2024年6月を予定しています。(適用は2024年9月~を予定)

学歴におけるポイント加算については、MOMの指定する第三者証明機関による学歴証明書の取得・提出が必須となります。(2023年9月1日以降の新規申請からの新制度、更新の場合には2024年9月1日から適用)

(参考)MOM指定の第三者証明機関のリストはこちら
https://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/employment-pass/documents-required#changes-to-verification-requirement

2023年9月現在、日系企業ではGPC Gateway社が第三者認証機関となっています。
※日本の大学機関のみ対応可能。

Firm-Related Attributes(企業属性)
C3:Diversity(多様性)
企業の多様性を評価する項目で、多様化に繋がる場合にはポイントが加算されます。
具体的には今回EP申請対象となる候補者の国籍の社員が、その企業の中におけるPMETsの何割を占めているかで評価します。
割合が5%未満の場合には20ポイントの加算、5%以上25%未満の場合には10ポイントの加算となります。
ただし、会社全体のPMETs(月額給与がS$3,000以上の社員)の人数が25名未満の場合には、割合に関わらず自動的に10ポイントが加算されます。

<注意>
パスポートに記載されている国籍でカウントされます。例えばシンガポール永住権(PR)をお持ちの方でパスポート記載の国籍が日本の場合には、日本人としてカウントされます。

自社の社員の国籍別人数についてはmyMOM Portalにて確認することが出来ます。

C4:Support for Local Employment(ローカル人材雇用数)
ローカルの労働力に雇用機会を創出し、ローカルプロフェッショナルと外国人プロフェッショナルの両方からなる補完的なチームを構築している組織を評価する項目です。
同じ業界におけるローカルPMETsのシェアと比較して、自社のローカルPMETsシェアが高ければポイントが加算されます。
同じ業界の全企業をローカルPMETsの割合が高い順に並べた場合、上位50%以内に入れば20ポイント、51~80%の場合には10ポイントの加算となります。
(ローカルPMETsにはシンガポール永住権保持者も含みます)


ただし、C3と同様に会社全体のPMETs(月額給与がS$3,000以上の社員)の人数が25名未満の場合には、割合に関わらず自動的に10ポイントが加算されます。

自社がどこに位置しているかはmyMOM Portalにて確認することが出来ます。

<参考>自社のDiversity(C3)とローカルPMETsシェア(C4)の確認の仕方(myMOM Portal

参照:https://www.mom.gov.sg/-/media/mom/documents/work-passes-and-permits/compass/mom-compass-infographic-final.pdf?utm_medium=booklet&utm_source=compass-infographic-final&utm_campaign=COMPASS

Bonus Criteria(ボーナス基準)
Individual Attributes(個人属性)
C5. Skills Bonus(スキルボーナス)
このボーナスはローカルの労働力では不足している、高い専門的なスキルを必要とする職種をShortage Occupation List (SOL)として認定し、そのリストに属する職種の場合にポイント加算されます。
SOLのリストにある職種で、且つEP申請する候補者の国籍が企業のPMETsのうち1/3未満の場合、20ポイントが加算されます。また、SOLのリストにある職種で、且つEP申請する候補者の国籍が企業のPMETsのうち1/3以上の場合には、10ポイントが加算されます。

このスキルボーナスが適用される場合には、いくつか条件があります。
1. SOLにある業務を遂行する必要がある。
2. EP申請において対象となるJobタイトルを選択する必要がある。
3. 以下いずれかに該当する場合には、追加の業務要件を満たす必要がある。
 ・COMPASSをクリアする(40ポイント以上を獲得する)ために、C5のスキルボーナスポイントが必要な場合
 ・SOL内の特定のテック職種として5年間有効期限のEPを申請する場合

このボーナスはあくまでSOLに該当する場合に加算されるポイントとなるため、このポイントを獲得してEPを取得した場合にはその職種を遂行しなければなりません。配置転換等で別の職種になってしまった場合には、再度EP審査の対象となります。

詳細についてはSOL guideをご確認ください。

Firm-Related Attributes(企業属性)
C6. Strategic Economic Priorities Bonus(戦略的経済優位ボーナス)
積極的な投資、イノベーション、国際化、企業・労働力の変革活動を行う企業を評価するボーナスポイントです。少なくとも1つの対象プログラムに参加している、または基準を満たしている場合に、10ポイントが加算されます。
このポイントについては、関連プログラムを運営する支援機関の裁量に委ねられおり、ボーナスポイントが授与された場合には、MOMより企業に通知があり、Self-Assessment Tool(SAT:自己評価ツール)にも反映されます。ボーナスポイントは、最長3年間、または対象プログラムへの組織の参加期間のいずれか短い期間が適用されます。

EP申請やCOMPASSに関する参考URLはこちら
https://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/employment-pass
https://www.mom.gov.sg/-/media/mom/documents/work-passes-and-permits/compass/compass-booklet.pdf

※COMPASSについては過去のニュースレターもご参照ください。
基本情報:https://mailchi.mp/pasona/singapore-newsletter-employmentplanning-jan2023
追加情報:https://mailchi.mp/pasona/singapore-newsletter-compassupdates-apr2023


EP申請の流れ

1.公平な選考活動&MCF広告掲載
EP申請を検討する前に、まずはローカルマーケットを含めて該当者がいないか公平に選考活動を行います。そのために、シンガポール政府が運営している求人媒体 MyCareersFuture(MCF)に求人広告を最低14日間掲載します。掲載は一部の免除対象を除き、必須となります。

※MCF掲載免除対象※
・従業員数が10名未満の会社
・EP申請対象者の月額固定給与がS$22,500以上の場合
・1か月以下の短期間業務のためのEP申請の場合
・国内異動の場合(シンガポールで就業中の既存社員が関連子会社または支店に異動する場合)
Overseas intra-corporate tansferee(ICT)としてEP申請する場合

掲載する求人内容については、TAFEPのガイドライン(Tripartite Guidelines on Fair Employment Practices)に沿って作成しましょう。また、掲載する給与条件等については、EP申請内容と同等レベルである必要があります。

2.EP対象者の選定
ローカルマーケットにて該当者がおらず、外国人候補者で検討することになった場合、最終的にオファーを出す候補者=EP対象者の選定をします。

3.Self-Assessment Tool(SAT)自己診断ツール実施
EP対象者が決まったら、その対象者の学歴、生年月日、経験、想定している月額給与をもとに、自己診断ツールSelf-Assessment Tool(SAT)にてEP許可が下りるかどうかチェックを行います。

SATの使用方法についてはこちらをご参照ください。
Pasona Newsletter:新Self-Assessment Tool(SAT)についてご紹介

4.EP申請必要書類の準備&学歴証明書取得
SATの結果、EP取得が問題なさそうであれば、EP申請に向けての必要書類の準備を行います。
2023年9月以降の新規申請からは学歴証明書の提出が必須となりますので、対象機関に取得を依頼します。(更新は2024年9月~適用)
※学歴証明書の提出はCOMPASS審査対象者のみ。
※学歴証明書取得にかかる時間は依頼する対象機関により異なりますので、依頼時に確認してください。

<EP申請に必要となる書類>
・EP申請候補者のパスポートの個人情報ページ
・ACRAに登録されている企業情報
・MOMが指定する第三者認証機関が発行する学歴証明
※その他必要に応じて追加書類の提出を求められる場合もございます。

尚、EP申請時の書類提出等は不要ですが、シンガポールの就労ビザを取得する場合には、新型コロナウイルスワクチンの接種が必要となりますのでご注意ください。(シンガポール入国後にワクチン接種証明を National Immunisation Registry (NIR)にアップデートする必要があります)
詳細はこちらをご確認ください。

5.EP申請
EP申請する前に、対象となる候補者から必ず書面による同意を得ましょう。
一般的には雇用契約書がそれに該当します。雇用条件およびEP申請に対する同意を得ましょう。
まず、候補者にCandidate’s formを記入してもらいます。
その後myMOM PortalのEmployment Pass (EP) eServiceからEP申請を行います。

6.In -Principal Approval(IPA)受領
EP申請が許可されると、IPAが送付されます。このIPAはビザの仮承認となります。
対象者がシンガポール国外にいる場合には、このIPAレターをシンガポールへの入国時にイミグレーションで提示します。通常このIPAレターの有効期限は6か月となりますので、その間に入国と発行手続きが必要となります。

7.EPカード発行&Notification Letterの受領
シンガポールに入国後、EPカード発行手続きを行います。手続きはEP申請と同様、myMOM PortalのEmployment Pass (EP) eServiceから行います。
発行手続きをすると、Notification Letterをメールで受け取りますが、このNotification Letterが発行されたらシンガポール国内での就労を開始することが出来ます。(Notification Letterの有効期限は1か月)
必要に応じてMOMに出向き、指紋と顔写真の登録をします。
EPカードは発行手続きもしくは必要手続きが全て完了してから5営業日以内に郵送されます。

ローカル人材含めた対象者の選定からEPカード発行まで、おおよそ2~3か月ほどかかります。
余裕を持って対応するようにしましょう。

※EP取得後:住所、電話番号、パスポート番号諸々の変更届
EP取得後にEP保持者の給与や、住所、電話番号、パスポート番号などに変更があった場合には、速やかにMOMに通知が必要です。特に給与はEP取得要件にもなっている重要な情報となっており、特に給与が下がってしまう場合、EP取得要件を満たしていなければEPキャンセルとなりますので注意が必要です。
引っ越しや携帯電話変更などに伴う住所や電話番号の変更についてもアップデート漏れをよくお聞きします。
EP保持者の住所、電話番号に変更があった場合には、5営業日以内に変更届を出す必要があり、怠った場合にはペナルティを受ける可能性があります。
Employment Pass: notify MOM


以上、今月は『最新版のEP申請全体の仕組みと申請フロー』をお届けいたしました。今後取り上げてほしいニュースレターのテーマについてご意見等ございましたら、どうぞお気兼ねなくご連絡ください。

※本記事で提供している情報は2023年9月27日時点の情報をもとに作成しています。ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。本記事で提供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、当社では一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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