いつもお世話になっております。パソナシンガポールです。
早いもので3月ももう後半に入ってまいりました。
例年この時期は駐在員の方の入れ替わりも多く、引き継ぎでバタバタされていらっしゃる企業様も多いのではないでしょうか。
メイン業務の引き継ぎで手一杯で、人事面の引き継ぎが十分にされずに前任が帰国してしまい困っている、従業員に関する重要な情報が引き継がれておらず、ローカル社員とトラブルになってしまった、というお声も毎年お聞きしております。
そこで今月の記事では「これだけは確認しておきたい!人事労務の引き継ぎリスト」をお届けいたします。スムーズな引き継ぎにむけて、本記事がお役に立てれば幸いです。
●従業員の雇用条件
まずは人事労務の基本として、シンガポール法人で働いている従業員の雇用条件の引き継ぎをしましょう。特にマネジメントとして把握しておくべき内容として、まずは従業員の国籍、永住権(PR)保有の有無、就労ビザの種類をリスト化して引き継ぎすると良いでしょう。
就労ビザを必要とする従業員の場合には、就労ビザの有効期限もあるため特に情報管理が重要です。またEmployment Pass(EP)取得の際に自社の国籍比率も重要となってくるため、外国人かそうでないかだけではなく、国籍も含めてマネジメントとしては把握をしておく必要があります。
さらに、定年や再雇用に関わってくる情報として、従業員の年齢も情報として伝えておきましょう。
シンガポールでは従業員一人一人と必ず雇用契約書を締結しています。その雇用契約書の中に雇用条件が記載されておりますので、それぞれの従業員がどのような雇用条件で勤務をしているのかも把握できるように、雇用契約書も引き継ぎが必要です。
※myMOM Portalへのアクセス権限をお持ちの場合には、アクセス権限についても後任の方に引き継ぎをしておきましょう。就労ビザ取得の為に重要となる貴社のローカル従業員の人数や、国籍人数について後任の方が確認できるようになります。
※シンガポールでは従業員の年齢や国籍、民族などの情報はセンシティブな個人情報に値します。本ニュースレターでは労務管理が必要な立場の方に向けて、労務管理上必要となる情報としてお伝えしております。また、シンガポールでは従業員の年齢や国籍、民族、宗教、家族状況などにより雇用条件を変えることは差別的な雇用慣行とみなされますのでご注意ください。(TAFEPガイドライン参照)
●就労ビザ(EP、S Pass、WPなど)の有効期限と採用枠(Quota)
駐在員含め、外国人を雇用している企業については就労ビザの有効期限と採用枠(Quota)の把握は非常に重要です。昨今のシンガポールでは毎年のようにEPやS Passの申請基準が変更となっており、更新のタイミングによって条件が変わってきます。前回と同じ給与条件では就労ビザ取得ができない場合もございますので、外国人社員の就労ビザの有効期限について、後任に必ず引き継ぎをしておきましょう。
また、S PassとWork Permit(WP)については採用枠(Quota)があるので、採用枠についても把握をしておきましょう。特にローカル従業員(シンガポール人・永住権保有者)の人数の増減によって採用枠が変更されますので、引き継ぎ時点で採用枠にどれくらい余裕があるのか確認しておくことが大事です。
●再雇用中の従業員の再雇用契約書
定年を迎えて再雇用中の従業員がいる場合には、再雇用契約書についても必ず後任の方に引継ぎをしましょう。特に再雇用については1年更新としているケースが多いため、後任の方が更新手続きを担う可能性が高いです。どのような契約条件で再雇用をしているのか、次の更新はいつなのか、再雇用時にはどのような話をしていたのか、を後任の方に伝えてください。「前任者とはこういう話をしていた」という言った言わない問題で揉めているケースが非常に多いです。重要な条件についてはきちんと書面に明記し、口約束だけで終わらせないようにしましょう。
また、定年が近い従業員がいる場合には、いつ定年を迎えるのか、再雇用について既に話をしているのかどうかを引き継いでおきましょう。
●自社の就業規則書
自社の就業規則書がある場合には、就業規則書についても必ず後任の方に引き継ぎましょう。ご自身の部下となる現地雇用の従業員がどのような就業条件のもと働いているのか把握をすることはとても重要です。
また、最後にアップデートされたのがいつなのかも伝えておくと良いでしょう。シンガポールでは毎年のように雇用法や定年などについてレギュレーションの変更があります。今の就業規則書が最新のレギュレーションに則しているのか、場合によっては後任の方がアップデートをしていく必要があるかもしれません。
※2024年1月1日~Paternity leaveとUnpaid infant care leaveの取得週数・日数が変更となっています。詳細は過去のニュースレターをご覧ください。
https://mailchi.mp/pasona/singapore-hr-news-summary-dec2023
●人事評価の内容
自社で行われている人事評価についても後任の方に引き継いでおきましょう。特に直近のものは必ず引き継ぎをしておいてください。駐在員の交代に伴って評価の仕方が変わってしまい、不満を抱えて退職していくローカル従業員は多いです。後任者も前任者と同じように評価しなければいけない、というわけではなく、大事なのはその従業員がこれまでどのような実績を出していて、どのような評価をされてきたかという経緯を把握することです。ローカル従業員がシンガポール法人を支えていて、中にはどの駐在員よりも長く自社に貢献しているローカル従業員もいらっしゃると思います。ローカル従業員の貢献に対する敬意をもって、評価についてもしっかり引き継ぎをしていきましょう。
●採用活動の方法・TAFEPガイドライン
採用活動の方法やチャネルについても後任に引き継ぎをしておきましょう。シンガポールは転職が一般的な国ですので、後任の方が着任して早々に従業員の突然の退職、急いで採用活動をしなければならない、というケースもあるかと思います。来たばかりの国での慣れない採用活動は後任の方にとって負荷が大きいので、これまでの採用活動の記録があれば共有をしておくと良いでしょう。また、我々のようなエージェントを使って採用活動していた場合には担当者情報を共有しておくとスムーズです。
また、採用活動を進めるにあたって大事なのは、公平な雇用慣行ガイドライン、Tripartite Guidelines on Fair Employment Practices(TAFEPガイドライン)の理解です。新しく赴任されてきた方がこのガイドラインをよく理解せずに採用活動をスタートしてしまい、シンガポール労働省(MOM:Ministry of Manpower)から摘発を受けてしまった場合、最悪就労ビザの発給が停止・制限される等の重たい罰則を受けるケースもございます。このガイドラインの存在については必ず後任の方に伝えてください。
以上、人事労務の引き継ぎについてお伝えしてきました。ローカルHRがいらっしゃる場合には、上記のような内容はローカルHRが管理しているケースも多いと思います。ただし、ローカルHRに任せっきりではなく、マネジメントとして把握しておくべき情報ではありますので、後任の方にしっかり引き継ぎをしていただけたらと思っています。
とはいえ、引き継ぎの期間も短く、なかなかゆっくり人事労務について話せる時間がない…というお声もお聞きしております。
パソナシンガポールでは毎月、新任赴任者向けに人事労務入門セミナ-を無料で開催しています。最新の就労ビザ情報、雇用法、当地における採用・人事労務について、赴任される方に最低限抑えておいていただきたい人事労務情報を網羅してお届けしております。毎月新任赴任者が来ると必ずこのセミナーに送りこんでいただいている企業様もいらっしゃる大人気セミナーです。
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初めてのシンガポール赴任、もしくは久しぶりのシンガポール赴任の方におすすめな研修ですので、こちらもこれから赴任される方がいらっしゃる場合には是非ご案内ください。
以上、今月は『これだけは確認しておきたい!人事労務の引き継ぎリスト』をお届けいたしました。今後取り上げてほしいニュースレターのテーマについてご意見等ございましたら、どうぞお気兼ねなくご連絡ください。
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※本記事で提供している情報は2024年3月21日時点の情報をもとに作成しています。ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。本記事で提供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、当社では一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。