Conditions of Employment 2022 〜Flexible Work Arrangementsや福利厚生に関するレポート〜

いつもお世話になっております。パソナシンガポールです。

シンガポールではここ数年でフレキシブルな就労条件の構築が政府より推奨されておりますが、特にコロナパンデミック以降その動きは強くなっています。
シンガポール予算案2023においても、2024年にFlexi-work arrangements(FWAs)が強制力と罰則規定を持ったガイドライン化することが発表されています。

そのような中で、シンガポール労働省(Ministry of Manpower:MOM)は、2023年5月にConditions of Employment 2022をリリースしました。このサーベイでは、FWAsやAnnual Leave Entitlementなど、就労条件や環境に関する調査がまとめられています。
6月のニュースレターでは、このConditions of Employment 2022の内容をお伝えいたします。
今後もシンガポール政府としては、従業員の就労条件・環境の向上に対しての施策を続けてくると思いますので、本サーベイの内容を参考にしながら自社の状況の見直しや今後の制度改定にお役立ていただければと存じます。

Conditions of Employment 2022とは?

Conditions of Employment 2022(以下本サーベイ)は、Manpower Research and Statistics Departmentが2022年の4Qに実施したサーベイの結果をもとにまとめられたものです。
このサーベイは従業員数25名以上のプライベートセクター(民間企業)と、パブリックセクター(公共団体)を対象にしており、合計3,500事業所、1,065,200人の従業員から回答を得ています。


Flexible Work Arrangements(FWAs:柔軟な勤務形態)

コロナパンデミックにより、柔軟な勤務形態(FWA)の提供に対する雇用者の考え方が変化しています。Safe Management Measuresの解除に伴い、2021年時点の90.5%から減少はしたものの、FWAを提供した企業の割合はコロナ以前の2019年時点の52.7%と比較して71.4%と大幅に高い水準を維持しました。(Chart1)

以下のChart2をご覧いただくと分かる通り、パンデミック前はFWA自体ない企業がほぼ半数を占めておりましたが、パンデミック後逆転し、少なくとも2つ以上のFWAsを提供している企業が半数を占める結果となっています。(Chart2)

パンデミック後、オフィスに戻る従業員が増えるにつれてテレワークを提供する企業の割合は、2021年の56.5%から2022年には34.0%に減少しました。また、フレックスタイム制、時差出勤、パートタイム勤務を提供する企業の割合も、2021年をピークに減少しています。(Chart3)

2022年のデータとして、半数以上(51.6%)の企業が従業員に対して、交通状況や育児・介護などを理由に週5日の時差出勤を認めています。テレワークについては週2日認めている企業の割合が最も多くなっています。(Chart4)

FWAの提供については、今後もコロナ前よりも高い水準で推移する見込みです。FWAを提供した企業のうち、「今後1年間FWAを提供し続ける可能性がない」と回答した企業は少数派(16.2%)に留まりました。(Chart5)

従業員に対してFWAsを提供する理由として最も割合が多かったのは、「従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、生産性を高めるため」(61.8%)でした。「離職率を抑えるため」(52.8%)も半数以上の企業が理由に挙げています。(Chart6)

FWAsを提供していない25.5%の企業のうち67.6%は、業務特性上、オフィスや作業現場でのフィジカルな立ち合いが必要と回答しました。これは製造業や建設業の従業員を含みます。
その他の理由としては、「従業員の業務パフォーマンスのモニタリングが難しい(25.2%)」や「メンバー同士の協働が難しい(24.7%)」が挙げられています。これはプロフェッショナルサービスや製造業において特に多く見られました。(Chart7)


Non-Statutory Leave (NSL:法定外休暇)

Non-statutory leave(NSL:法定外休暇)は、従業員の福利厚生のために雇用主が追加で定める休暇です。
雇用主が従業員のことをどれだけ大切にし、従業員を維持・誘致したいと考えているかを示す良い指標となっています。NSLを提供する企業の割合は増加しました。(全体 2022年:97.8%、2020年:94.6%)(Chart8)

NSL提供率の高い企業は、保険サービス(100.0%)、金融サービス(98.7%)でした。従業員数500名を超える大企業は、中小規模企業(従業員数25~199名)と比べるとNSL提供率が高い結果となりました。(大企業99.7%、中小企業97.6%)

有給の介護・育児休暇、病気休暇(NSL)を与えていない企業のうち44.5%が、限られた人数で業務を回しているために「従業員にこれ以上の休暇をとらせることができない」と回答しています。また、このNSLは全員ではなく対象者のみが利用できるために「メリットがない(30.6%)」「従業員の平等性に懸念がある(27.8%)」という意見も目立ちます。(Chart9)


Employee Support Schemes (ESS:従業員サポートスキーム)

ESSは従業員の仕事以外の面をサポートするスキームです。ESSには健康増進プログラムや授乳施設などがあります。これらの福利厚生は、仕事に対するモチベーションとエンゲージメントを高めることを目的としています。
2022年には44.5%の企業が少なくとも1種類のESSを提供していると回答しています。その中でも、メンタルヘルスに関するサポートがトップ(32.4%)となり、バディ制度などのメンタリングサポートや、ストレスマネジメント研修の場を提供している企業が多いようです。(Chart10)

NSLと同様に、ESSの提供割合は従業員数と比例関係にあり、従業員数500名を超える企業は77.6%がESSを提供しており、従業員数25名~199名の企業の場合には41.8%という結果でした。

65.9%の企業が今後もESSを提供し続ける予定と回答しています。
ESSを提供する理由として多かったのは、「従業員のモチベーションと生産性を高めるため(77.6%)」「離職率を抑えるため(54.3%)」「人材確保のためのアピールのため(43.2%)」という回答でした。(Chart11・12)


Work-Week Pattern(週間労働パターン)

正社員の半数以上(56.1%)が週5日制で勤務しています。この割合は、週5.5日勤務や週6日勤務の従業員の割合が減少する中で上昇傾向にあります。(Chart13)

建設業は引き続き週休2日制の正社員の割合が低く(20.5%)、一方で情報通信業(94.7%)と金融・保険サービス業(94.6%)は、ほぼ全員が週休2日制の正社員である。
夜間勤務や営業時間中の接客など交代制勤務を必要とする仕事の性質上、アドミン・サポートサービス業(特に警備・調査業(25.1%))と宿泊・飲食サービス業(24.1%)では、シフト勤務の正社員の割合が高くなっています。


Annual Leave Entitlement(有給休暇の支給状況)

年次有給休暇の支給日数が15日以上の正社員の割合は、2022年に減少している。15日以上21日未満(34.4%→33.7%)、21日以上(13.2%→11.8%)で減少しています。(Chart14)
年次有給休暇の支給日数が15日以上の従業員は、主に金融・保険サービス業(95.1%)で、リスクテイク、リスクマネジメント、リスクコントロールの役割にある人の休暇取得が義務付けられていました。

資金や人的リソースが豊富な大企業は、より手厚い休暇を提供することが可能です。従業員数500人以上の企業の半数以上(61.1%)が15日以上の休暇を提供しているのに対し、従業員数25~199人の中小企業では29.0%に過ぎませんでした。中小企業ではフルタイムの従業員に対して7〜14日の年次有給休暇が与えられることがほとんどです。(Chart15)

▼Conditions of Employment 2022のフルレポートはこちらから
https://stats.mom.gov.sg/iMAS_PdfLibrary/mrsd-coe-2022.pdf


以上、今月は『Conditions of Employment 2022』をお届けいたしました。今後取り上げてほしいニュースレターのテーマについてご意見等ございましたら、どうぞお気兼ねなくご連絡ください。

※本メールで提供している情報は2023年6月21日時点の情報をもとに作成しています。ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。本メールで提供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、当社では一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

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