いつもお世話になっております。パソナシンガポールです。
ここ数年、我々のお客様からローカルスタッフの定年・再雇用のご相談が増えております。
シンガポールに進出してきて30~40年経つ企業では、ちょうど定年を迎えるローカルスタッフが出てくるタイミングかと存じます。
シンガポールでは定年・再雇用法(Retirement and Re-employment Act)があり、定年と再雇用年齢が定められています。また、再雇用についてはTripartite Guidelines on Re-employment of Older Employeesで、再雇用オファーの進め方や、オファー内容についてガイドラインが定められています。
そこで今月の記事では「シンガポールにおける定年・再雇用について」をお届けいたします。本記事が皆様のお役に立てましたら幸いです。
※駐在員の方の入れ替えがあった際には、ぜひ弊社までお知らせください!
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【シンガポールの定年・再雇用】
冒頭にご説明の通り、シンガポールには定年・再雇用法(Retirement and Re-employment Act)がございます。この法律により、現在のシンガポールの定年は63歳、再雇用オファーの義務は68歳までとなっています。

この定年・再雇用の年齢ですが、段階的に引き上げられることが既に発表されています。

S’pore retirement age to go up to 64 in 2026, re-employment age to rise to 69 | The Straits Times
シンガポールにおける再雇用については、以下を全て満たす従業員が対象者となります。
- シンガポール国籍者、もしくは永住権保持者
- 55歳以上で雇用された従業員の場合、63歳になる前に現在の雇用主に少なくとも2年間勤務していること
- 職務遂行能力が雇用主の満足する水準にあること
- 康状態が就労継続に適していること
上記を全て満たす場合には基本的に雇用主として再雇用のオファーをする義務があります。
ただし、再雇用の対象であるにもかかわらず、雇用主が再雇用のポジションを提供できない場合、雇用主は以下のいずれかを行わなければなりません:
- 従業員本人の同意のもと、再雇用の義務を別の雇用主に引き継ぐ(他の企業への移籍斡旋)*
または - 一時金として「雇用援助金(Employment Assistance Payment, EAP**)」を支払う
*別の雇用主による再雇用について
雇用主が再雇用対象者を再雇用できない場合、以下の2つの条件を満たせば、雇用主は再雇用義務を他の雇用主に譲渡することができます:
- 新しい雇用主が、現在の雇用主から該当従業員についての再雇用義務を引き継ぐことに同意すること、および
- 該当従業員が新しい雇用主からの再雇用の申し出に同意すること
該当従業員は新しい雇用主からの再雇用オファーを受け入れる義務はなく、オファーを断ることを選択した場合は、現在の雇用主から雇用援助金(EAP)を受け取る権利があります。
**雇用援助金(Employment Assistance Payment, EAP)について
もし雇用主が社内のすべての再雇用の選択肢を検討したうえで、それでも適切な職務を見つけることができない場合、雇用主はEAPを支給します。
EAPとは、
- 徹底的な検討を経たうえで、最後の手段として提供されるものである(ラストリゾート)
- 新たな就職先を探すまでの一定期間の生活を支援することを目的とする
- 一時金として支給されるもので、金額は3.5か月分の給与に相当し、最低S$6,250、最高S$14,750と定められている
【再雇用オファーの進め方】
再雇用のオファーを進める際には、以下の点に留意しましょう。
- 再雇用の対象となる従業員を特定する。(定年が近い従業員は誰か?いつ63歳を迎えるか)
- 従業員が63歳になる少なくとも6か月前から話し合いを開始する。
- 対象となる従業員には、定年日の少なくとも3か月前までに再雇用契約書を提示する。
- 再雇用対象外の従業員には、早めに通知し、退職準備や他の就業機会の確保ができるよう配慮する。
- 再雇用契約書の提示にあたっては、高齢労働者の再雇用に関する三者協議ガイドライン(Tripartite Guidelines on Re-employment of Older Employees)を参考にする。
- 契約条件は公正かつ合理的なものであることが求められる。
【再雇用オファーの条件の設定】
再雇用オファーの条件ですが、上記でも言及されている通り、「公正かつ合理的」でなければなりません。再雇用条件については Tripartite Guidelines on Re-employment of Older Employees に詳細なガイドラインが設定されているため、こちらを参照してください。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
<再雇用の契約期間について>
再雇用契約は最低1年で、最長68歳まで1年ごとに更新可能です。
最初の再雇用契約は、最低定年年齢である63歳に達した日に開始する必要があります。
(例:2025年8月1日に63歳になる場合、再雇用契約の最初の開始日は2025年8月1日となります。)
<再雇用におけるJobアレンジメント>
再雇用される従業員の職務の取り決めには柔軟性を持たせるべきであるとガイドラインでは説明されています。
- 必要であれば、合理的な要素に基づき、給与および手当の適切な調整 を行った上で、同じ職務に従業員を再雇用する、または
- 既存の職務を変更して従業員を再雇用する、または 再交渉された条件で異なる職務に再雇用する、または
- 両者の間で相互に合意された その他の勤務形態で従業員を再雇用する。
職務範囲が変更される場合、または再雇用された従業員が別の職務に就くことが予想される場合、雇用主は従業員に十分な時間的余裕をもって通知し、準備を整えるべきであるとされています。場合によっては、従業員が新しい職務になじみやすくなるよう、再雇用前に十分な研修を行うべきであるとガイドラインでは推奨されています。
ガイドラインでは雇用主だけではなく、従業員側にも、雇用主が提示する再雇用の選択肢についてオープンマインドを保つべきでありとしています。
<再雇用の給与と福利厚生について>
再雇用対象者の給与は、新たな職務や責任などの合理的な要因に基づいて調整される場合があります。
これまでの雇用契約内容と異なる場合には、変更内容について再雇用対象者と雇用主との間で交渉する必要があります。
まず、給与については生産性、職務責任、賃金体系などの合理的な要素に基づくべきであるとされています。
再雇用に当たって給与を調整しなければならない場合、雇用主は以下を考慮するとよいとされています。
- 再雇用として同じ職務へ留まらせる場合には、給与は同じ職務に必要な経験と能力を持つ若い従業員のレベルまで引き下げることができる。例えば、その職務の給与レンジの中間点まで調整することができる。
- 他の職務への再雇用が提案された場合、新しい賃金は職務の価値、従業員の関連する経験、その他の属性を考慮すべきである。
福利厚生の中でも医療費はコストが嵩むため、気になるポイントかと思います。ガイドラインでも医療費について下記の通り触れられています。
従業員に対する医療給付を検討するにあたり、雇用主は以下の選択肢を検討することができます。
- 既存の医療給付を継続する
- 医療費が懸念される場合、雇用主は以下を検討するとよい
i. 再雇用された従業員に対する医療給付の共同支払い(Co-payment)
ii. 請求可能な医療給付金に適切な上限を設ける - 既存の医療給付を再構築し、代わりに追加のメディセーブ拠出金またはその他の柔軟な給付を提供し、それを従業員のメディシールド生命または統合シールドプランの保険料(該当する場合)の支払いに充てる。雇用主にとっては、安定性と予測可能性を提供することで、医療費の管理に役立つ。従業員にとっては、メディセーブ・アカウントを積み立て、雇用後に医療給付を受けることができる。
最後に休暇についてですが、通常新たに雇用契約を結ぶ場合、雇用から3ヶ月経過した時点でAnnual LeaveやSick Leaveなどの福利厚生が発生しますが、再雇用される従業員については、既に長年にわたって組織に貢献し、満足のいく業績を上げてきたことを考慮すると、福利厚生の付与までの待機期間は不要と考えられます。
また、再雇用における福利厚生提供時の社内公平性を維持するため、雇用主は再雇用された従業員と職務上の責任や条件が類似している他の従業員(新入社員を含む)の福利厚生を考慮すべきであるとガイドラインでは言及されています。
貴社内に再雇用対象者がいる場合には、必ず事前にTripartite Guidelines on Re-employment of Older Employeesを確認してから再雇用オファーを進めていきましょう。
弊社では再雇用オファーに関する進め方のご相談や、再雇用契約書の作成のご支援も可能でございます。お気軽にご連絡ください。
以上、今月は『シンガポールにおける定年・再雇用について』をお届けいたしました。
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※本記事で提供している情報は2025年5月30日時点の情報をもとに作成しています。ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。本記事で提供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、当社では一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
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