いつもお世話になっております。パソナシンガポールです。
4月15日、シンガポールの政労使 Tripartite Workgroupから、2024年12月1日よりTripartite Guidelines on Flexible Work Arrangement Request (FWAR:柔軟な勤務形態の要請に関するガイドライン) を施行すると発表がありました。連日このガイドラインに関するニュースが飛び交っている中、雇用主として何をしなければならないのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで今月のニュースレターではTripartite Guidelines on Flexible Work Arrangement Requestの概要についてお届けいたします。本メールがお役に立てれば幸いです。
【FWARガイドライン導入の背景について】
Flexible Work Arrangements(FWA)については、既にご存知の方も多いのではないでしょうか。
コロナ禍で多くの企業がリモートワーク(Work From Home:WFH)を実施したことや、コロナ禍からの回復期においてもハイブリッドワークの継続、混雑緩和のための時差出勤などの活用実績もあり、2022年4月には政府からTripartite Statement on Flexible Work Arrangementsが発表、政府から企業に対してFWAを積極的に取り入れるよう推奨しておりました。そのため既に何かしらのFWA制度を取り入れている、もしくは過去に取り入れていた企業は多いかと思います。
シンガポールでは高齢化が進んできており、自宅で高齢の親の介護をしなければならない従業員も増えてきている、そして今後も増えることが予想されています。同時に少子化も進んでいることから、国としては労働力を確保していくこと、そしてそのリソースを最大限活用していく必要があります。そのため政府としては従業員の置かれている状況に応じてフレキシブルな勤務形態を認めることを企業に要請するべく、今回のFWARガイドライン導入をすることになりました。
【FWARガイドラインの前提】
今回のFWARガイドラインですが、企業としてFWAの制度を新たに導入しなければならないというものではなく、従業員からFWAの申請があった場合に、企業として検討・回答をしなければならないというものです。企業としてFWA制度があるか無いかに関わらず、従業員から正式な申請が提出されたら必ず検討をしなければなりません。
【FWAの種類】
FWAは以下の3つのフレキシビリティのことを指します。
① Flexi-place: 場所に関するフレキシビリティ
オフィス以外で勤務できるような在宅勤務制度やハイブリッド制度
② Flexi-time: 時間に関するフレキシビリティ
トータル勤務時間が変わらない範囲で、時差出勤・シフト・時短勤務などのフレックスタイム制度
③ Flexi-load: 業務量に関するフレキシビリティ
パートタイムやジョブシェアリングなど、業務量やスコープ、それに伴う給与について相談できる制度
(日本の時短勤務にイメージが近いかもしれません。勤務時間を短くする代わりに給与もそれに伴って変更する等)
【雇用主としてどのような対応が必要となるのか】
自社の従業員からFWAの正式な申請があった場合、雇用主として検討をして2か月以内に返答をする必要があります。もし申請を却下する場合には、書面で理由を明示する必要があります。
ガイドラインでは、従業員からのFWAの申請については、書面(メール含む)で行われ、申請日、FWAの内容と頻度や期間、申請の理由、開始日・終了日について明記をする必要があるとしています。
従業員からの申請例として、例えば下記のように申請が来ることが想定されます。
“I would like to request to change my daily work hours from Monday to Friday, 8am to 5pm, to Monday to Friday, 10am to 7pm, so that I can send my five-year-old son to school in the morning. I request for this arrangement to begin on Jan 1, 2025 and end on Dec 31, 2025.”
(参照)https://www.channelnewsasia.com/singapore/flexible-work-arrangements-how-request-wfh-work-home-4271711
このような申請に対して、検討をした上で2か月以内に返答をする必要があります。
また、雇用主として以下の4つについて従業員に提示することを推奨されています。(義務ではない)
a. 従業員が申請できるFWAの種類(デフォルトで利用できるものも含め)
b. 特定のポジションが特定のFWAに適さない理由
c. FWAの申請が却下される理由の例
d. FWAの使用に対する期待・要望
例)・FWA 就業中に期待される仕事の成果物を上司から従業員に伝える(評価方法も含む)
・上司と従業員は、FWA就業中にどのように連絡を取り合うかを検討する。
尚、従業員からFWAの申請があった場合、必ず受け入れをしなければならないわけではなく、合理的な理由により申請を却下することも可能です。どのような理由であれば合理的なのか、逆に非合理的なのか、FWARガイドラインでは下記のように例が示されています。
申請を却下する合理的な理由の例:
- コスト:雇用者のコスト負担の大幅な増加につながるため
- 生産性やアウトプットへの影響:個人、チーム、または組織の生産性やアウトプットの量や質を著しく低下させる、または顧客ニーズへの対応に悪影響を及ぼすため
- 実現可能性または実用性:職務の性質上、実現不可能または非現実的である、あるいはFWAの要請に対応するために他の従業員の勤務形態を変更する余力がない、または新たな従業員を雇用する必要があるため
申請を却下する非合理的な理由の例:
- マネジメントがFWAを信用していない
- 従業員が一貫して満足のいく成果を出しているにも関わらず、上司が部下の仕事ぶりを直接オフィスで見たいため
- FWAがない状態が組織の伝統または慣習である。
【FWARガイドライン施行にむけて雇用主として何をするべきか】
2024年12月1日以降、会社としてFWAに関するポリシーを定めていてもいなくとも、従業員からFWAの申請があった場合には、FWARガイドラインに則り申請を検討・回答する必要があります。そのため、FWARガイドラインの施行前に会社としてのFWAポリシーの作成(申請フローも含む)をしておくことをお勧めいたします。
FWARガイドラインについてはまだ発表されたばかりのため、今後政府から追加で補足が発表される可能性もございます。また追加で情報入りましたら各営業担当やニュースレターでお知らせいたします。FWARガイドラインに沿ったポリシーの作成や対応についてご相談がございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせくださいませ。
<参照>
Tripartite Guidelines that Shape the Right Norms and Expectations Around Flexible Work Arrangements to Come into Effect on 1 Dec 2024
Tripartite guidelines on flexible work arrangement requests
Guide to Managing Flexible Work Arrangement Requests (for Employers)
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以上、今月は『Tripartite Guidelines on Flexible Work Arrangement Requestの概要について』をお届けいたしました。今後取り上げてほしいニュースレターのテーマについてご意見等ございましたら、どうぞお気兼ねなくご連絡ください。
※本メールで提供している情報は2024年5月10日時点の情報をもとに作成しています。ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。本メールで提供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、当社では一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。