いつもお世話になっております。パソナシンガポールです。
4月に入り、新たにシンガポールにご赴任された方も多くいらっしゃるかと思います。
ローカルスタッフの就業規則書や雇用契約書は既にご確認されましたでしょうか?
シンガポールでは雇用法(Employment Act)があり、従業員の働く就労条件や福利厚生について最低限の条件が定められています。ただし、雇用法で定められている条件は最低限の条件となっており、実際には雇用法で定められている条件よりも手厚い就労条件、福利厚生になっていることが一般的です。特に近年、政府からのFlexible Work Arrangementsの推奨などもあり、シンガポール人にとってはより働く環境・制度に関する関心が高まっています。採用活動や優秀な人材のリテンションにも影響してくることから、見直しをされる企業様も増えてきています。
そこで今月のニュースレターでは「シンガポールの就労条件・福利厚生情報~マーケットスタンダードから最近のトレンドまで~」をお届けいたします。本メールがお役に立てれば幸いです。
【シンガポールの雇用法】
既にご存知の方も多いかと思いますが、シンガポールには雇用法(Employment Act)があり、雇用主と雇用関係にある全ての従業員に対して適用される最もメジャーな法律です。正社員だけではなく、パートタイム従業員、有期雇用社員、派遣社員も雇用法の対象となります。
※雇用法適用対象外:
船員(Seafarer)、メイド・ヘルパー(Domestic Worker)、政府機関で働く従業員もしくは公務員(Statutory board employee or civil servant)
雇用法では、休暇や医療費補助、給与の支払い、雇用終了などについて定められていますが、中でも第4章(PartⅣ)と呼ばれるセクションでは、給与レンジの低い従業員を守るために休日、就労時間、残業代などに対する就労条件について定められています。
※第4章は月額基本給与がS$2,600以下の一般労働者(Non-Workman)および月額基本給与がS$4,500以下の肉体労働者(Workman)が適用対象となります。
雇用主は当たり前のことですが、この雇用法を遵守する必要があります。就業規則書や雇用契約書に定められている就労条件はこの雇用法を遵守したものとなっているかと思いますが、シンガポールでは比較的頻繁に雇用法のアップデートがあるため、定期的な見直しが必要です。
(参考)About the Employment Act
https://www.mom.gov.sg/employment-practices/employment-act
【シンガポールにおける就労条件・福利厚生の慣習】
国が異なりますので、日本とシンガポールでは就労条件や福利厚生の慣習は異なります。シンガポールの雇用法を遵守することはもちろんですが、シンガポールの雇用法は最低限の条件を定めたものとなっているため、実際には雇用法で定められている以上の条件を付与していることが特徴です。
日本では求人票上の福利厚生に「法定通り」という文字が並ぶことも多いですが、シンガポールで「法定通り」としてしまうと条件の悪い会社と思われてしまうこともございます。
「日本の就労条件と合わせたい」と日本の法律・慣習をベースに就労条件や福利厚生をご決定される企業もいらっしゃいますが、日本とシンガポールでは異なる点も多いため、基本的にはシンガポールの慣習に合わせて設定いただくことをおすすめします。
<こんなに違う!日本とシンガポールの法律と慣習>
※クリックすると別画面で大きく表示されますので、そちらでご確認ください。
特にAnnual Leave(有給休暇)は雇用法と実際の慣習に乖離があるため、日系企業が慣習よりも低く設定しがちな福利厚生のひとつとなっています。
実際にシンガポール労働省(MOM:Ministry of Manpower)が行ったEmployees’ Working Conditionsの調査によると、Annual Leaveの取得日数は2018年から2022年にかけて、14日以下が38.9% → 35.4%へ、15~21日が44.3% → 44.6%、21日以上が16.7% → 20.1%と取得日数が増加していることが伺えます。
※クリックすると大きく表示されます。
(参照)https://stats.mom.gov.sg/Pages/Employees-Working-Conditions.aspx
【より柔軟な働き方・働く環境が求められているシンガポール】
シンガポールでは国民の高齢化が進んでいることにより、ゆくゆく多くの国民が家族の介護をしなければならないことを見越し、働きたい人が家族のサポートをしながらも働き続けられる環境づくりをするべく、国としても柔軟な働き方・働く環境の推進をしています。
2024年度にFlexi-work arrangements(FWAs)が強制力と罰則規定を持ったガイドライン化されることが既に発表されており、企業としても対応が問われてくるかと思います。
WHAT JOBSEEKERS WISH EMPLOYERS KNEW(Jobstreet Report)によると、シンガポールではハイブリッドモデル(オフィス勤務と在宅勤務のミックス)を希望する人の割合がグローバルと比較しても高い割合となっています。
*Preferred work locationでHybrid mode(e.g. few days at home office, few days at home) を選んだ人の割合:シンガポール71%、東南アジア62%、グローバル54%
Flexible Work Arrangements(FWA)は企業の業態や職種によっても、取り入れやすいものとそうではないものがあるかと思います。また、会社として公平な制度になっているかどうかも重要なポイントです。取り入れる際には下記のようなステップで検討・運用をしていきましょう。ルールを設定するだけではなく、きちんとルール通りに運用されているかも重要です。
(参考)Flexible Work Arrangements (FWA)
https://www.tal.sg/tafep/employment-practices/work-life-harmony/fwas
勤続年数が長いローカルスタッフが多い企業ですと、スタッフから不満が出ることもなく、自社の就労条件や福利厚生が他と比べてどうなのか気が付きにくいかもしれません。
ここ数年、在シンガポールの日系企業の間では定年退職者、もしくは定年に近づいてきているスタッフが出てきたことから、久しぶりに採用活動をされる企業も増えてきています。採用活動を始めてみたら自社の条件が見劣りしてしまい、採用活動に苦戦されているケースもお見受けします。また、優秀なスタッフがよりよい条件を求めて辞めてしまうというケースも後を絶ちません。
是非一度自社の就労条件や福利厚生が一般的な内容になっているか、確認をしてみてください。内容が気になり、アップデートをご検討されている場合には、お気軽にパソナシンガポールまでご相談くださいませ。
パソナシンガポールでは毎月、新任赴任者向けに人事労務入門セミナ-を無料で開催しています。
最新の就労ビザ情報、雇用法、当地における採用・人事労務について、赴任される方に最低限抑えておいていただきたい人事労務情報を網羅してお届けしております。毎月新任赴任者が来ると必ずこのセミナーに送りこんでいただいている企業様もいらっしゃる大人気セミナーです。
是非新たに赴任される方がいらっしゃる場合にはご案内いただければと思います。
※直近の開催予定:4月25日(木)、5月23日(木)
※お申し込みはこちらから
また、シンガポール赴任前にオンラインで受けていただく赴任前研修(有料)も提供しております。
シンガポールの概況や生活情報について最新の情報を現地からお届けします。また、第2部では異文化コミュニケーションやローカル人材のマネジメントについてもレクチャーします。
初めてのシンガポール赴任、もしくは久しぶりのシンガポール赴任の方におすすめな研修ですので、こちらもこれから赴任される方がいらっしゃる場合には是非ご案内ください。
以上、今月は『シンガポールの就労条件・福利厚生情報~マーケットスタンダードから最近のトレンドまで~』をお届けいたしました。今後取り上げてほしいニュースレターのテーマについてご意見等ございましたら、どうぞお気兼ねなくご連絡ください。
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https://pasona.com.sg/ja/home-employer-jp/
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※本記事で提供している情報は2024年4月12日時点の情報をもとに作成しています。ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。本記事で提供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、当社では一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。