Report On Wage Practices 2023

6月25日にシンガポール労働省(Ministry of Manpower:MOM)よりReport On Wage Practices 2023(賃金慣行に関する報告書)が発表されました。
賃金上昇率や賃金制度について報告されているレポートです。シンガポールでの人材採用、また優秀な従業員のリテンションにおいて、賃金はとても重要なファクターになっているかと思います。
そこで、7月の記事ではこのReport On Wage Practices 2023の内容についてご紹介いたします。本記事がお役に立てれば幸いです。

Report On Wage Practices 2023(以下、本レポート)は毎年MOMよりリリースされている賃金慣行に関する報告書です。
本レポートで紹介されているデータは、MOMが民間企業に対して行ったAnnual Wage Changes (AWC) survey (年次賃金変動調査)から得られたものとなっています。その中でも少なくとも1年間同じ雇用主のもとで継続雇用されているフルタイム従業員の賃金変動に関するデータを取得されています。

<対象期間>
2022年11月~2023年11月

<調査方法>
オンライン調査

<調査対象>
本レポートの元データとなるAWCについては、従業員10人以上の民間企業が対象となり、約5,494の民間企業が調査に回答しています。従業員数はトータルで970,100人となり、そのうち、本レポートの対象となるCPFを納付している勤続1年以上の居住者(シンガポール人・永住権保持者)の正社員は494,400人(一般社員236,100人、ジュニアレベル180,300人、シニアマネジメントレベル78,000人)、非居住者正社員は317,200人でした。
 


<収益状況>
まず、賃金に直結する会社の収益状況ですが、黒字の事業所の割合は引き続き高いものの、経済成長の鈍化を反映し、2023年に黒字と回答した事業所の割合は2022年に比べて減少しています。
(2022年83.9%→2023年82.1%)

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<賃金動向>
2023年の労働市場は引き続き堅調で、失業率は低水準で安定、労働需要は年間を通じて冷え込みました。そのため、フルタイム従業員(居住者)の名目賃金総額は引き続き増加しましたが、増加率は2022年の6.5%から2023年には5.2%に鈍化しました。とはいえ、賃金上昇率は不況でなかった年と比較して上回っています。
インフレ(2023年は2022年より緩和)を考慮した後の実質賃金については、2023年は0.4%増となり、2022年と同様の伸びとなりました。

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従業員のグレード別の賃金上昇率は以下の通りです。
今後は、2024年にフルタイム従業員(居住者)のLocal Qualifying SalaryがS$1,400からS$1,600に引き上げられるため、低所得者層の賃金上昇が続くと予想されています。

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2023年も全業種で賃金が上昇しました。管理・サポートサービスについては、累進賃金モデル(Progressive Wage Model:PWM)の影響を反映して、昨年よりも賃金上昇率は高くなりました。(2022 年5.2%→2023 年7.1%)食品・飲料サービス、小売業とともに、これらの業種の賃金は、PWM の拡大とともに、今後も安定した成長を続けると予想されています。
金融サービス(7.6%)や情報通信(6.2%)のような成長セクターでは、平均を上回る賃金上昇が見受けられました。一方で製造業(4.0%)と建設業(4.2%)は、世界的なサプライチェーンの混乱など、対外的な逆風の影響を受けたものづくり産業の減速を受けて、平均を下回る賃金上昇率が続きました。

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事業所のサイズ別の賃金上昇率は以下の通りです。全体的な傾向としては、事業所のサイズが大きいほど、賃金上昇率は高くなっています。

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Annual Variable Component(年間のボーナス ※固定ボーナスであるAWSを含む)については、事業所側の回答では支給無しが一番多い結果となりましたが、従業員側の回答では1~2か月分が一番多い結果となりました。

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事業所のサイズ別のAnnual Variable Componentは以下の通りです。賃金上昇率と同様、事業所サイズが大きくなるほど支給額は大きくなる傾向が読み取れます。


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最後に、賃金上昇とボーナス額を決める際に考慮される要因については、いずれも従業員個人のパフォーマンスと事業所のパフォーマンスが多い結果となりました。

<フルレポートはこちらから>
https://stats.mom.gov.sg/iMAS_PdfLibrary/mrsd-report-on-wage-practices-2023.pdf

以上、今月は『Report On Wage Practices 2023』をお届けいたしました。
また、今後取り上げてほしいニュースレターのテーマについてご意見等ございましたら、どうぞお気兼ねなくご連絡ください。

※本記事で提供している情報は2024年7月16日時点の情報をもとに作成しています。ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。本メールで提供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、当社では一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。


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