いつもお世話になっております。パソナシンガポールです。
2月に発表されたシンガポール予算案の中でもトピックスに挙がっておりましたが、シンガポールでは雇用における公平性をさらに強化するため、2027年末までにWorkplace Fairness Act(WFA:職場公平法)が施行される予定です。
この法律は、採用・昇進・評価・解雇などにおける差別的取り扱いを防止し、より公平で透明性の高い職場環境を実現することを目的としていますが、従来のTripartite Guidelines on Fair Employment Practices(TGFEP:公平な雇用慣行ガイドライン)に加え、より実務的な対応準備が求められています。
我々も日々お客様の採用活動をご支援する中で、公平な雇用慣行に関するガイドラインについて継続的にご案内しております。
その結果、お客様の間でもご理解は着実に深まっていると感じておりますが、一方で依然としてガイドラインに抵触する可能性のある募集内容が見受けられるケースもございます。
また、ご赴任されたばかりの方や初めて採用活動に携わる方もいらっしゃるかと存じます。
そこで、今月のニュースレターでは、Workplace Fairness Act(職場公平性法)施行に向けた採用実務のポイントご紹介いたします。
本記事が皆様のお役に立てましたら幸いです。
※駐在員の方の入れ替えがあった際には、ぜひ弊社までお知らせください!
新しいご担当の方に毎月無料のニュースレターをお届けいたします。
お問い合わせ先:sales@pasona.com.sg

現行のTripartite Guidelines on Fair Employment Practices
(TGFEP:公平な雇用慣行ガイドライン)について
TGFEP(公平な雇用慣行ガイドライン)は、Ministry of Manpower(MOM:労働省)を含む政労使三者によって構成されたTripartite Alliance for Fair and Progressive Employment Practices(TAFEP:公平かつ革新的な雇用慣行を目的とした政労使連合)により発行されているガイドラインです。
TGFEPでは、採用活動~採用後の評価、雇用終了に至るまで、公平で実力主義的な雇用を行うよう定めています。現時点ではガイドラインではあるものの、ガイドラインを遵守しなかった場合には就労ビザ発給差し止めや、罰金などの厳しい罰則が伴います。
本ガイドラインについては、2025年1月に配信したニュースレターで詳しく説明しているので、そちらも併せてご確認ください。
Pasona Newsletter:公平な雇用慣行ガイドライン(TGFEP) – 2025年1月配信
https://mailchi.mp/pasona.com.sg/singapore-tgfep-jan2025
Workplace Fairness Act(WFA:職場公平性法)とは
WFAは、採用・昇進・評価・研修・解雇などの雇用判断において、特定の属性を理由とした差別を禁止する法制度です。
保護対象となる主な属性:
- Age / 年齢
- Nationality / 国籍
- Sex, marital status, pregnancy status, and caregiving responsibilities / 性別、婚姻状況、妊娠、育児・介護責任
- Race, religion, and language ability / 人種、宗教、言語
- Disability and mental health conditions / 障害、メンタルヘルス状態
企業は、これらではなく、能力・経験・適性に基づく“merit-based hiring(実力主義採用)” を行う必要があります。
特に採用活動は、偏見や不公平が生じる最初の段階であり、時には意図せず発生することもあります。例えば、求人広告の表現や、採用プロセスにおける一貫性の欠如などがその例です。
そのため、採用活動は、企業がWFAへの対応準備を進める上で、特に重要な重点分野とされています。
2027年末という施行時期はまだ先のように見えるかもしれませんが、企業は早い段階から、公平な採用慣行の導入・強化に取り組むことが推奨されています。
採用ポリシーの見直し、一貫した採用プロセスの整備、採用に関与する担当者へのトレーニングには、時間と継続的な取り組みが必要です。
早期に対応を開始することで、差別的な判断が行われるリスクを低減できるだけでなく、より幅広い人材を惹きつけることにもつながります。
WFAの下では、企業が以下のような行為を行った場合、差別とみなされる可能性があります。
- 保護対象属性(protected characteristic)を理由として、個人に不利益となる雇用上の判断を行うこと
- 保護対象属性に基づき、差別的な採用指示やポリシーを出す、または共有すること
(例:男性のみを採用するよう採用担当者へ指示するポリシー) - 求人広告やJob Descriptionにおいて、保護対象属性を、採用条件・優遇条件・不利条件・不採用条件として記載すること
違反時のリスク
WFA施行後は、差別的採用に対する企業責任もより明確化される見込みです。WFA施行後、違反企業には以下のような措置が取られる可能性があります。
- 民事罰(Civil Penalty)
- 是正命令
- 調査対応
- EP / S Pass申請への悪影響
- 採用差別に関する申立て対応
また、悪質なケースや調査妨害等については、経営層・責任者個人に責任が及ぶ可能性も議論されています。
企業は、ゼロから新しい制度を構築する必要があるわけではありません。
既存の採用実務を見直し、採用判断が一貫性を持って行われているか、また客観的かつ職務関連性のある基準に基づいているかを確認・改善することが、主な対応となります。
以下、WFA施行に向けて、企業が採用プロセスの各段階で実施できる実務的な対応策について紹介しています。
TAFEPがWFA施行に向けて企業に求めている主な対応策
TAFEPは、WFA施行前の段階から、企業に対して採用プロセスの見直しを推奨しています。
特に以下の点が重要とされています。
1. Job Advertisement(求人票)の見直し
求人広告には、差別的と受け取られる表現を避ける必要があります。
<求人票でよく見る差別的と受け取られる表現>
- Native Japanese speaker
- Bilingual in English and Mandarin (without a clear job-related reason)
- EP/S Pass/WP/DP/LTSVP Holders preferred/welcome/only
- Fresh graduates are welcome to apply
企業は、応募者属性ではなく、
- 必要スキル
- 職務経験
- 業務要件
を明確に記載することが求められています。
対応すべきアクション
- 求人広告を公開する前に、明確な確認・承認プロセスを整備すること。(公開前に社内でダブルチェック体制を敷く)
- WFAおよび TGFEPに沿って、職務と関連性のない条件や、差別的とみなされる可能性のある条件を求人広告から削除すること。
*なお、保護対象属性(protected characteristics)については、業務上真に必要な場合、または国家政策上必要とされる場合にのみ記載が認められます。
- Fair Consideration Framework(FCF)の要件を満たしていることを確認すること。
これには、MyCareersFuture(MCF) への求人掲載も含まれます。
※FCFではEP・S Passを申請する前にMCFへの14日間の掲載を義務づけていますが、EP・S Passの申請対象者となる外国籍人材のオファーが決まってからの形式的な掲載はFCF違反です。外国籍人材に対象を広げる前に、必ずMCFへの掲載を先に行い、ローカル人材で適任者がいないかを検討しましょう。
2. 選考・評価プロセスの標準化
公平な採用において、「一貫性」は非常に重要です。
採用プロセス全体を通して、同じ職務関連基準を適用することで、候補者を一貫性かつ客観的に評価することが可能になります。
対応すべきアクション
- Job Application Form(応募フォーム)を見直し、職務適性の判断に必要な情報のみを収集すること(例:スキル、経験、職種や業界上必要な法的・規制上の要件など)
* NRIC番号や生年月日などの個人情報については、原則として応募段階では取得せず、内定時点で取得すべきとされています。
CHECK!
応募フォームに下記項目が残っていませんか?
もし残っているようであればすぐにアップデートしましょう。

- 適性試験やテストを実施する場合は、同一ポジションの全候補者に対して一貫して実施すること。また、試験内容や評価基準についても、業務との関連性が維持されているか、偏りがないかを定期的に見直す必要があります。
* 職務と無関係な基準を評価するテストやアセスメントは、本来適性のある候補者を不当に排除してしまう可能性があります。(例:事務職ポジションに対して、業務内容と無関係な高負荷の体力テストを課すケースなど)
- 面接では、職務の選考基準(スキル・知識・経験など)に直接関連する、客観的かつ統一された質問リストを使用すること。
- 面接官に対して、公平な採用に関するトレーニングを実施すること。
これには、TGFEPおよび WFAに関する理解も含まれます。また、一貫性・客観性のある評価を支援するため、評価シート(Evaluation Form)の活用も推奨されています。
可能な場合には、年齢・性別・経験などが異なるメンバーで構成された面接パネルを採用し、多様な視点を取り入れることで、面接プロセスにおけるバイアス低減を図ることも推奨されています。
特に注意が必要な質問:
- 結婚予定
– 出産予定
– 年齢
– 宗教
– 家族構成
– 国籍に関する不要な確認
これらは職務遂行と直接関係がない限り避けるべき質問ですが、実際に「面接時にこのような質問をされた」という候補者のフィードバックを我々も受けております。特に採用活動に初めて、もしくは久しぶりに携わる現場のHiring Managerの方がこのような質問をされる傾向がございます。社内で採用活動に関わる可能性のある全ての方にTGFEPとWFAを理解してもらう必要があります。
3. 採用記録の管理
TAFEPは、企業が採用判断を説明できるよう、記録を残すことの重要性を強調しています。
適切な採用記録が保存されていない場合、企業は「どのような基準で採用判断が行われたのか」を説明・立証することが難しくなる可能性があります。
特に、採用判断について異議申し立てや調査が行われた場合には、そのリスクが高まります。
明確な記録を残しておくことで、採用判断が能力・適性に基づくものであり、職務と無関係な要素によって左右されていないことを示すことができます。
また、候補者選考基準が、全候補者に対して一貫して適用されているかを確認する上でも役立ちます。
対応すべきアクション
- 各採用活動における以下の記録を、少なくとも1年間保管すること。
– 面接記録
– 評価結果
– 採用判断に関する記録
- 透明性の確保、監査対応、および関連法令・ガイドラインへのコンプライアンス対応のため、記録を安全に保管すること。
4. オファー段階における公平性の確保
公平な採用は、オファー(Job Offer)の段階まで含まれます。
企業は、給与・福利厚生・職務内容・入社日などの主要な雇用条件を明確に記載した、包括的なオファーレター(雇用契約書)を準備する必要があります。
雇用条件を明確にすることで、
- 候補者との認識齟齬を減らす
- 不明点を確認しやすくする
- オファー受諾率向上につながる
といったメリットがあります。
対応すべきアクション
- 雇用条件および契約内容が、Employment Act(雇用法)およびその他関連法令に準拠していることを確認すること。
- 給与オファーおよび雇用条件について、明確かつ一貫性のある基準に基づいて決定すること。これにより、公平性(equity)の確保を支援できます。
- 候補者に対し、オファー条件を十分に確認・検討・質問するための適切な時間を提供すること。
- 組織内での公平性・一貫性を維持するため、定期的な見直しや市場ベンチマークを実施すること。
公平な採用は、WFAへの対応を進める企業にとって重要な優先事項となっています。
採用プロセスの各段階において意識的な対応を行い、明確な採用ポリシーを整備することで、企業は、
- 公平性
- 一貫性
- 説明責任を果たせる採用体制
を構築することができ、WFA施行に向けた準備強化にもつながります。
既に採用活動をスタートしている企業は現行のプロセスがTGFEP・WFAに準じたものになっているかを確認しましょう。これから採用活動を予定している企業はTGFEP・WFAへの理解を深めた上で採用プロセスを進めていきましょう。
今回のニュースレターはTAFEPのこちらの記事を参照しております。
貴社のローカルHRや採用活動に関わる可能性のあるローカルスタッフの方にはこちらのTAFEP記事をご共有ください。
Workplace Fairness Act: Fair Recruitment Practices | TAFEP
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以上、今月は『Workplace Fairness Act(職場公平性法)施行に向けた採用実務のポイント』についてお届けいたしました。ご参考になれば幸いです。
※本記事で提供している情報は2026年5月26日時点の情報をもとに作成しています。ご利用される方のご判断・責任においてご使用ください。本記事で提供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、当社では一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
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